The Lost Children
全体:☆☆☆☆
ストーリー:☆☆☆
映像:☆☆☆☆☆
音楽:☆☆☆
とある寂れた港町では、子供達がこつ然と姿を消す事件が多発していた。その裏では、一つ目教団なる集団が子供達を誘拐し、とある人物の夢を取り戻す為に子供達が利用されていた。そんな中、見せ物小屋で働く怪力男ワンは弟を一つ目教団にさらわれてしまい、弟を取り戻すため道中知り合った少女ミレットと共に弟探しの旅へと出る。
ジャン・ピエール=ジェネ監督3本目の鑑賞。彼の作品にはファンになりつつある。。
まず、なんといっても素晴らしいのは映像。1カット1カットがまるで絵画のよう。美しすぎる。何度もスクリーンショットを撮りたくなったくらい。アングル、エフェクト、セット造形何をとっても文句無し。緑色を基調とした画面の美しさに圧倒された。
話自体は、ミックマック、アメリに比べて少し趣味に寄ったかな〜という印象。監督が2人であることもあってか分からないけど、いつもより幾らか難解だった。
フリークや、奇形、クローンなど、異形とされるものが特徴的に登場していた。街中に存在しているフリークたちと、根城にいるクローン達の存在はある意味対比されているのか。
港町の表現は常に薄暗く、あまり笑顔を浮かべる人間も少ない。大人は皆盗みに興じ、子供達はそれに巻き込まれて盗みを働く。とにかく、重く湿った暗い空気が垂れ籠めているような雰囲気で、その陰鬱な空間から逃げる為にあの夢を見れない男は子供の夢を盗もうとしたのか。純粋無垢な存在から、沈み込み汚れた大人の世界からのせめてもの脱出のような表現なのだろうか、、。現代社会の「現実」を風刺しているのだとすれば、ロスト・チルドレン(the city of lost children)というタイトルもある意味、凄く意味深なタイトルな気もしてくる。
その世界の中で明るく輝くのが怪力男ワンの存在。彼の心はとても純粋で、どことなくフランケンシュタインを彷彿とさせるような風貌。もはや盗みを働く子供達よりもその精神は清純に描かれている。(子供達はどことなくすれた雰囲気で、大人びている感じ)その対比が、ワンを魅力的に感じさせ、尚且つ主人公として自然に成り立つ存在となり得ている。