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Brazil

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全体:☆☆☆

ストーリー:☆☆☆☆

映像:☆☆☆

音楽:☆☆☆

 

20世紀のどこかの社会では情報社会化が進み、人間たちは情報によって左右され、時には命さえも失う社会となっていた。主人公、サムは国の運営する局の中の記録局に務める男だったが、ある日から奇妙な夢を見るようになり、その夢の中に現れる女性に心惹かれていく。サムはその女性が現実に存在することを知るが、無実の罪に問われてその命を国に追われていることを知り、なんとか彼女を助けようと奮闘するが…

 

「鬼才」と称されることの多いテリー・ギリアム監督の作品を初めて観た。
カテゴライズするなら、ジャン=ピエール・ジュネの初期作品デリカテッセンとか、ロスト・チルドレン辺りに似ている。

アングラでありながらメッセージ性が非常にわかりやすい演出だったと思う。情報社会・テクノロジーによって人間性を失っていく人々、そしてその真実すらも情報操作によってかき消されていく社会。真実を貫き、自由を求める人は社会の反逆者とみなされて、抹消されていく社会。テロリストの絶えない社会であると描写があるがこれも真の悪い心を持ったテロリストではない。この「社会」を変えようとする自由を求める人々による犯行なのだろう。劇中ではヒロインのジルが「本物のテロリストには何人であった?」と主人公に問いかけるシーンも存在している。

彼の作品にはメッセージを伝えるためのメタファーやアイドルが点在している。それもかなりわかりやすい。例えば最初の情報局にある像の下には「真実を求めるものには自由が〜」的なメッセージがピックアップされたり、登場する部屋や建物という建物に存在する配管。あれは中を情報書類が中を通っている。それがそこら中に存在しているという時点で何が言いたいのかお察し。また、ラストのタトルが紙に覆われてしまうシーン、あれも自由人が情報によって抹消されていく様を手に取るように分かりやすく描写している。

ラストシーンは裏切られた感もあるがまあそうなりますよね感もあって複雑な気持ちになった。でも、この映画のラストはこれでよいと思う。テリー・ギリアムの鬼才たる所以は構成能力かと感じた。

個人的には、メッセージが浮き彫りになりすぎているかなとも思ってしまったけど。もう少し、隠れている方が好みだ。